パナソニック株式会社
デザイン組織強化に向けた長期的人事戦略始動ー企業導入事例 認知・共感から始まる全社的取組パナソニック株式会社 採用人事 石黒様 太田様、コミュニケーションデザイナー黒田様
デザイン経営を掲げるパナソニックは、デザイン組織の強化に向けた長期的な人事戦略の一歩として、2019年10月より約8ヶ月に及び、認知獲得から採用までを視野に入れたデザイン・クリエイティブ職種の新卒採用の取組みを実施。デザイン思考ワークショップ等を含む、多様な切り口のイベントを行うなど、本取組みをリードしたパナソニック株式会社 採用人事の石黒様、太田様、コミュニケーションデザイナーの黒田様にお話を伺いました。
プロジェクト概要Outline
- 実施内容
- デザイン・クリエイティブ人材の新卒採用に向け、デザイン思考のワークショップを含む3回のイベントを実施
- 実施期間
- 2019年10月〜2020年5月
実施背景Background
ビジネスの各分野で必要とされるデザイン・クリエイティブ人材を長期的に採用・配置・育成していくため、新卒採用の側面においてもこれまでとは異なる母集団形成を試み、HELLO, VISITSと合同で企画を実施。
実施結果Action
・3名のデザイン・クリエイティブ職種の学生を採用 ・「偶然の出会いを信じて待つ採用」では出会えなかった学生との接点創出 ・現場で活躍するデザイナーとのワークを通じ、相互マッチングをした上での採用
「デザインの力」を重要視し、新卒への魅力発信から組織設計まで一気通貫した長期的人材戦略を始動
ーなぜ今回このような取組を実施したのですか?
石黒:1951年に日本初の社内にデザイン部門が立ち上がってから現在に至るまで、デザイン・クリエイティブはパナソニックにとって非常に大切な役割を果たしてきました。そして、今日では世の中的にも「デザイン=見た目」という色やモノの形を創造するという狭義なものから、事業戦略・製品・サービス開発のスタート時からデザインのメンバーが参画することやデザイン手法による顧客の潜在ニーズの発見など、デザインが果たす役割は広義になっています。それは、グローバルに幅広く事業を展開している当社においても同様です。しかし、これまで新卒採用におけるデザイン・クリエイティブ職の採用は、家電の会社というイメージが強く、そのイメージに引っ張られてくるセレンディピティ(※幸運な偶然)に頼っている部分が大半で、より多くの方々にパナソニックでデザイン・クリエイティブ職として働く魅力について十分にお伝えする機会を持つことができていませんでした。そのため、まずは、こちらから積極的にデザイン・クリエイティブ職としてパナソニックで働く魅力について発信していくことからスタートし、職場とのマッチング、採用、配置、育成、活躍までを全体的な組織設計を含め、一気通貫で社内横断的かつ長期的に取り組む必要がありました。
ー対象はどういった方ですか?
太田:一口にデザイン・クリエイティブ職といっても、芸術系の大学や専門的な勉強をしている方に限っているわけではありません。文学部だけれどデザイナー的な思考ができる、経済学部だけれどコミュニケーション設計ができるなど可能性が少しでもある方とも接点を持ちたいと考えています。
ー具体的にどのように進められたのでしょう?
石黒:今回の取り組みでは、約半年の間にテーマの異なる3つのイベントを開催しました。初回のイベントは10月で、「次の100年を創るブランド戦略」をテーマに「企業ブランディング」の視点から異業種3社合同でイベントを開催しました。そして、11月には「伝え方が9割」という外部の講師を掲げたイベント、翌年1月には自社のデザイン部門の社員を交え、デザイン思考のプロセスを学ぶ「クリエイティブワークショップ」を行いました。
偶然の出会いを待つ採用ではなく、こちらから出会いを作る採用の重要性を感じた
ー実施結果はいかがでしたか?
太田:3名(美大系2名、理系1名)の学生さんが採用に至りました。そもそも、これまでの活動のままだと美術・芸術系の学生さんとは接点すら持てていなかったことを考えると、美術・芸術系の学生さんとセミナーやワークショップで相互理解を深め、採用に繋がったことは大きな成果でした。また、理系の学生さんの専攻は建築でした。「偶然の出会いを信じて待つ採用」ではなく、「こちらから仲間になってほしい学生さんのもとに出向く採用」の重要性を痛感しました。
ー通常の採用手法と比べていかがでしたか?
太田:通常のワークショップと違い、現場で活躍しているデザイナーの社員も学生と同じ輪に入りワークをするという点が特異な点でした。企業の採用という枠を超えて、この人と一緒に仕事をしたい、という本質的な観点を見ながら、マッチングが取れた状態で採用まで繋げることが出来てよかったです。
ー今後について教えてください。
石黒:今回の合同取組みを通じて、特定の職種に特化して相互に理解を含め、セグメントを絞ったジョブ型のアプローチとして、確かな手応えがありました。今回の取組みを皮切りに、デザイン・クリエイティブ人材の発掘から採用、活躍の支援まで、より一層取組みを深化していきたいと思います。