国立大学法人 金沢大学
全国初、最先端STEAM教育の有用性を「デザイン思考テスト」で実証 国立大学法人 金沢大学 教学マネジメントセンター・副センター長・教授 林 透先生
金沢大学では、令和2年度に採択された文部科学省「知識集約型社会を支える人材育成事業 (DP)」の一環として、文理融合・分野横断のSTEAM教育を全学的に推進することにより、金沢大学版・STEAM 教育モデルの国内外への発信を目指しています。その教育の効果検証として、新たに「デザイン思考テスト」を導入し、融合学域や先導STEAM人材育成プログラム(KU‐STEAM)で学ぶ学生166名が受検しました。 企画・運用から結果の分析まで一手に担われた、教学マネジメントセンター・副センター長・教授 林 透先生にその結果を詳しく伺いました。
プロジェクト概要Outline
- 実施内容
- 融合学域や先導STEAM人材育成プログラム(KU-STEAM)で学ぶ学生166名が受検。融合学域の学生については、主にポータルメッセージによる受検案内 。先導STEAM人材育成プログラムの受講生については、主に授業時間内での受検実施。
- 実施期間
- 2023年1月23 日(月)~2月17日(金)
実施背景Background
文理融合・分野横断のSTEAM教育において基礎となる「デザイン思考」に関する力を測定し、学生自身が「デザイン思考」の修得度合を把握するとともに、大学としての教育効果を検証するため
実施結果Action
「デザイン思考教育の受講経験のある学生群」のデザイン思考スコアの平均値は、「受講経験なしの学生群」のスコア平均より高く、有意差が見られた。 詳細は、『金沢大学・知識集約型社会を支える人材育成事業(KU-DP)アニュアルレポート2022』pp.53-58を参照 ※1
社会変革先導人材育成プログラムの検証にチャレンジ。成果実感を通して見えた、未来の教育現場とは
–導入の背景を教えてください。
金沢大学はデザイン思考教育のフロントランナーとなるべく、その学修成果として「デザイン思考力」を測定・可視化し、教育成果の検証にも役立てるためにデザイン思考テストの導入を決定しました。全国的に見てもデザイン思考教育を全学規模、かつ、体系的に提供する大学は現時点でほとんどありません。
社会とテクノロジーの関係がますます密接になっていくこれからのAI時代において体験の中でさまざまな課題を見つけ、クリエイティブな発想で問題解決を創造、実現していく力を身につけることが必要です。
金沢大学では「デザイン思考」や「アントレプレナーシップ」を身に付け、新しい価値を創造するイノベーション人材の育成を目指すため、令和2年度に採択された文部科学省「知識集約型社会を支える人材育成事業(DP)」において、新しい教育組織である「融合学域」を設置するとともに、全学域学生を対象とした「先導STEAM人材育成プログラム(KU-STEAM)」を開設。
さらに、世界で活躍する「金沢大学ブランド人材」の育成のため、全学域学生が受講する「共通教育GS科目」において、新たな科目群(6群)を設け、STEAM教育の基礎となる授業科目5科目を選択必修科目として課すことで、Society 5.0で必要とされる知識・スキルを学ぶ機会を提供しています。
イノベーション人材の育成に向けた最先端STEAM教育
–具体的な実施形式について教えてください
融合学域の学生と先導STEAM人材育成プログラムの受講生を対象に、2023/1/23~2023/2/17の約1ヶ月間で、計166名の学生がデザイン思考テストを受検しました。
実際の受検方法としては、融合学域学生については主にポータルメッセージによる受検案内を行い、先導STEAM人材育成プログラム受講生については授業時間内での受検実施を行いました。
実施結果から見えたデザイン思考スコアの有用性
–実施結果はいかがでしょうか?
デザイン思考テスト受検者166名を対象にスコアの分析を実施しました。属性を分類するために、共通教育GS科目6群の「デザイン思考入門」を受講、または、融合学域が開講する「デザイン思考」「デザイン思考演習」を受講した学生98名を「デザイン思考教育受講経験あり群」、受講していない学生68名を「受講経験なし群」としました。
両者のスコア平均の差を検証した結果、「デザイン思考教育受講経験あり群」のスコア平均が「受講経験なし群」のスコア平均より高く、有意差が見られました。このことにより、本学におけるデザイン思考教育の成果を一定程度証明することができ、大きな成果を得られたと考えています。
–今後の活用についてお考えになっていることはありますか?
令和4年度においては試行実施の側面がありましたが、次年度及びその翌年度も年間を通してデザイン思考テストを実施し、デザイン思考スコアの経年変化や学域ごとの比較などの分析を行いながら、学生への学修成果アセスメントはもとより、本学のデザイン思考教育の改善充実に活用できるようにして行きたいと考えています。
※1
『金沢大学・知識集約型社会を支える人材育成事業(KU-DP)アニュアルレポート2022』 https://chishiki.w3.kanazawa-u.ac.jp/publications/ku-dp_annualreport2022